ヴェクスター フルチューンの世界 ルシファー(にゃも氏)降臨
(2023.3.14連載開始 4.12更新)
これがなんだかわかるでしょうか?ヴェクスターのパーツです。
ギヤつきバイクのリアスプロケットではありません。
なんとヴェクスターのチューニングされている方で、ワンウェイクラッチまで軽量化されている方がいます。その方にいただいた写真です。
こんな改造初めて知りました。(マグネットローターの軽量化は当然のごとくやっております。)
ヴェクスターに乗って20年 パーツショップ運営10年以上になります。おかげさまで、海外だけでなく全国のヴェク乗りさまとたくさんの交流をさせていただいています。その中でも一番ヤバイ方に出会えることができました。にゃも氏です。おそらく日本一のヴェクスターのチューニングだと思いますので、世界一でしょう。この記事では ヴェクスターのチューニングを学ぼうという内容です。というのも もともと私はレストア ゴミ ジャンク派なので、 パワーアップやチューニングにはうといのです。『走ればなんでもいいや 金かけたくない。でも燃費野郎で コスパ重視です!』そんな感じです。
そして、ヴェク乗りの方も コスパ重視の方が多い傾向です。そして上手なパワーアップは実は燃費にもいいのです。スクーターで ハイチューンする方は 少なくてもアドレスV125で大抵がシグナスX系なのだと思います。でも いるのです。いたのです。ヴェクスターで ハイチューンどころか フルチューンされる方が。
もともとはXR600Rでフルチューンされていて、その方が趣味でヴェクもフルチューンされているのです。フルフューンXR600Rの技術・ノウハウがヴェクに生かされているのです。そしてさらに ご自身にてもかなり金属加工できる方でもあります。このフルチューンXR600Rは雑誌にも紹介されたことがあり、当時の記事が こちらにもあります。ヴェク乗りからすと想像を絶する恐ろしいXR600Rです。
さらにMIXIもやっておられまして、そちらにもヴェクの写真がたくさんあります。 こちらなどです。(MIXIに登録しないと見れません。)
ざっと改造内容です。
ベース 1998年式 ヴェクスター
エンジン系
ピストン
ボア61mm 凸型ピストン サイドスリット加工
(他にも多数あり ボア67mmなど)
ロングクランク化 ストローク+3mm
ダイレクトイグニッション化
マグネットローター軽量化 進角加工
オイルポンプ 強化 ハイギヤ化
オイルクーラー追加
オイルジェットシステム追加(カムシャフトに直接噴射します)
ヘッド系
ポート加工 研磨
チタン製バルブリテーナー
流用加工ハイカム
キャブレター
PJ34フラットバルブを取り付けるために
インマニ・スロットルなど 加工 調整多数
220mm フロントビッグローター
セルモーター強化
ライン14SQ強化
駆動系
ミッション
V125利用 加工 ハイギヤ化
センタースプリング強化
クラッチシュー強化型交換
などなど多数ありまして、まだまだございますし、
日夜 加工されていますのでドンドン改良されていくと思います。
それでは ヴェクスターの チューニングを学んでいきましょう。
目次(仮目次で変更・追加すると思います)
1フルチューンとは ハイチューンとちがう
2.ヴェクの排気量に関して
2.1ヴェクスター 最大ボアアップ ボア67mm 200越え フルチューン ルシファーチューン
3.ヴェクスターのクランクケースボーリング クランクケース穴拡大について
4.キャブレターについて PJ34
5.フルチューン ピストン加工について
6.ポート加工について
7.エンジンオイルについて
・・・・
1 フルチューンとは ハイチューンとちがう
まずここを理解することに非常に時間がかかりました。
にゃも氏が 通っているフルフューンレーシングショップのヴァイタルスピリットのwebサイトを紹介いただきました。このページに詳しく書いてあります。ぜひ一読をすすめます。 こちら
私の理解だと、フルフューンはトータルバランスでパワーの追及をして耐久性を犠牲にしない。コツコツとフリクションロスなどを無くす・軽量化するなどを積み上げていく。乗りやすいので日常使用も可能。こんな感じでしょうか。
これに対して ハイチューンは 個別に パワーのみを追求することです。耐久性やバランスは考慮しません。レース車両などは1レースごとにエンジンOH・パーツ交換しているとのことです。
ほとんどのヴェク乗りの方は レースなどしないので、フルフューンを学んだ方がいいのがよくわかりました。
つい初心者は ボアアップに目を奪わて、無理なボアアップなどをしてバランスを崩して 乗りにくくなってしまいます。
また コツコツとフリクションロスを無くしていくのは本当に手間がかかることです。クランクの芯だしからはじまり、カムシャフトのズレの修正などあり、組み方 トルク管理まで多岐にわたります。ヴァイタルスピリットが組むエンジンだと ワークスエンジンのパワーをはるかに超えるとのことです。
となると、適当にずーーーと乗ってしまったヴェクスターだと どんどん フリクションロスが増えていきますね。パワーダウンで燃費も悪化しますね。
2.ヴェクの排気量に関して
にゃも氏によると ボア67mmまでは可能とのことです。
67mmなので、33.5x33.5x3.14x58.6 で 207ccですね。
ロングクランクだと 33.5x33.5x3.14x61.6 で 217ccになりますね。
実はヴェクスターは200cc越えできるポテンシャルあるのですね。
実際にボア67mmをやろうとすると シリンダースリーブを探すところからになります。そして シリンダースリーブの入れ替えはとても大変でお金もかかります。ピストンならなんとか流用できそうなものを探せそうなので、中国で見つけたらキープするようにしておきます。
ヴェクで200越えなんて夢がありますね。セロー225とかとほとんどかわりないですし、りっぱな軽二輪になれますね。(150だと高速はかなり苦しいのです。)
ビッグスクーターと比べるとヴェクは車体も軽量ですし、空冷のままなのがいいですね。ぜひ にゃも氏に217cc化してもらいたいぐらいです。
と、このことをお伝えしたら、すでに 217cc化したことがあるとのことです。しかもにゃも氏のMixiを拝見すると2008の時点でボア67mmにされています。さすがですね。なので、次回は ボア67mmについてお聞きします。
2.1ヴェクスター 最大ボアアップ ボア67mm 200越え フルチューン ルシファーチューン(2023.3.31記載)
私はヴェクの限界・最大排気量はボア65mmで200越えできないとずっと思っていたのですが、にゃも氏によるとちがうようです。しかも無理なボア拡大でなく、強度・耐久性なども考慮した フルチューンです。さすが、XR600Rという恐ろしいフルチューナーです。当店はかつて ボア63mmで鬼チューンと呼んでいましたので、にゃも氏は鬼をはるかに超えますので、悪魔でしょうかね。しかも耐久性・燃費(リッター25-30キロ)もいいとのことです。ヴェクで200cc越えして 耐久性・燃費もいいなんて悪魔でなく、天使よりですかね。ヴェクスター ルシファーチューンがよさげですかね。
さて冗談はおいといてすすめます。ここからは インタビュー形式もあります。
Q.なぜ67mm化しようと思ったのですか?
A. 2008年 当時、走行距離:30000kmを超えたので、オーバーホールするなら、61mmのボーリングより、排気量が大きいほうが良いと考えました。また、使えるピストン(15mmピストンピン)を探している余裕もありませんでした。
丁度、ヴァイタルスピリットにCRF150F用のタケガワ 67mm鋳造ピストンがあったので相談。
バルブリセス加工ができるので 採用しました。
のちに台湾のレーシングチームへ注文。
65mm、66mm、67mm(鍛造ピストン)68mm(鋳造ピストン)とレパートリーが増えました。
ピストンには、ローコンプとハイコンプの2種類あり、組み立てる時に選ぶことができます。
なるほど、きっかけは腰上OHだったのですね。いきなりボーリングを飛び越えるつもりでいるのが漢(オトコ)ですね。 さらにのちには 台湾レーシングチームにもピストンを注文されているのですね。68mmを入れる予定もありそうなので、68mmだとさらにアップしますね。さすがヴァイタルスピリット関係の方なのでハイレベルですね。ちなみにボア68mmだと ノーマルクランクで213cc ロングクランクだと224ccです。セロー・FTR越えです
Q.67mmだと シリンダースリーブの打ち替えなどで高額になるだけでなく手間もすごいです。多くの人は パワーのあるバイクに乗り換えてしまいます。なぜヴェクでそこまでしようと踏ん切りがつきましたか?
A.仕事の都合上、足元に工具や材料を積んで、移動する事が多かったからです。最新の車両は、フレーム形状が変更されて、荷物が載せられないので、乗り換えは、考えていませんでした。
また、車体重量があるので、パワーがあるほうが楽に走れるだろうと言う感じですね。ヴェクスターのエンジンは、改造する余裕があるんですが、改造部品が少ないのが悩みでした。
部品が無いのなら作る!の精神で、楽しんでいます。
フラットフロア重要ですよね。コンパネ・畳など固定しないで何枚も運べますしね。これはヴェクにできてカブにはできない芸当です。いやー シグもV125もフラットフロアで改造パーツ豊富なのですが、乗り換えられなくて本当によかったです。というより にゃも氏のような生粋のフルチューナーだと乗り換えてもフルチューンしそうですね。『部品がなければ作る!』の精神も素晴らしいですね。普通の人はまず思いつきもしないですし。私だとひたすら探すのがメインです。次は流用考え、最後の最後で作ることを考えます。難しいことをなるべく避けているのですが、にゃも氏は最初から難しいことにぶつかっていくのですね。まさに漢(オトコ)ですね。
次はピストンに関してです。
今は無き、タケガワ製の67mm鋳造ピストンを採用したとのことです。
お値段は2008年当時16000円ぐらいだったとのことです。後に鍛造ピストンも30000円ぐらいで発売されたそうですが、鍛造のため肉厚が薄くバルブリセス加工が難しいため採用しなかったとのことです。現在(2023.3)は共に絶版で、たまたまオランダに在庫が残っているようで67mm鋳造ピストンが5万円超えているとのことです。(鋳造(ちゅうぞう) と
鍛造(たんぞう)の違いがよくわからないかたは 検索エンジンなどで調べてください。)
こちらは仮組の写真です。
さらにヴェクのシリンダーヘッドに合わせて加工が必要です。
ピストン加工前のマーキングです。にゃも氏によると
『ピストンヘッドは、圧縮が高すぎるので、
燃焼室の凹みに合わせて、凸の部分は、40mmで加工。
バルブリセス加工は、同じ形状をコピーして、削りました。
当時は、ボール盤が無かったので、
リューターとミニサンダーの刃を駆使して加工しました。』
とのことです。ご自分で加工しているのがすごいですよね。
加工済みピストンの仮組の写真です。バルブの干渉などを調べるためにおそらく何度も組み直したと思います。
にゃも氏によると
『シリンダーの高さ合わせは、アルミのスペーサー(0.5mm)+
ベースガスケット(0.5mm)
ヘッドガスケットは、昔、台湾で加工してもらった、
67mmの物を使用しました。』
とのことです。ベースガスケットを2枚にしないでアルミスペーサにしているのもフルチューンに関係あるのだと思います。(通常はベースガスケットを増やすだけです。)
ボア67mm用スリーブについて
Q.どこで探しましたか?費用はどれぐらいでしたか?
A.スペアエンジンが手元にあったので、分解。
腰下のスタッドボルト周りに余裕があることを確認できたので採寸。
75mmまでならボーリングできる事が判明。
アメリカの LOSANGELES SLEEVE CO.(L. A. スリーブ社)のサイトで シリンダースリーブを探しました。L.A.SLEEVE (lasleeve.com)
取引しているアメリカの業者へ、購入依頼しました。
1本:6000円 x 本数 + アメリカ国内の送料 + アメリカの消費税 + 日本への送料 + 日本の消費税が掛かります。
単価(1本)8000円くらいになります。
次に使うために型の違うシリンダースリーブも見つけています。(円高の時だったので、安く購入出来ました。)
ヴェクは75mmまで可能とサラッと書かれていますが、さすがXR600Rのフルチューナーですよね。我々もバラせばエンジンの採寸ぐらいはできますが、どれくらいまで削ってもいいかはわからないのです。
また てっきりスリーブは国内の内燃屋さんがもっているのと思っていたのですが、ご自分で用意されたのですね。今度はアメリカからですか。台湾と続き国際色豊かですね。スリーブは単なる鉄管なのですが、エンジン用となると専用品なので意外に高いです。現在だと円安ですし、かなり高くなっていることでしょう。2008年当時は1ドル95円ぐらいでしたので 為替だけで1.5倍高くなります。
Q.スリーブ打ち替えボーリング加工費用は どれぐらいでしたか?
A. ヴェクスターのシリンダースリーブは、鋳込み制作なので、抜けません。作業工程ですが、新しいスリーブの外径に合わせて、スリーブ部分(内径)を切削します。シリンダーへスリーブの圧入。
圧入後、同じ寸法になるように、スリーブのスカート部分の長さを合わせて切削します。シリンダーヘッド側もスリーブ上面を切削して、高さを合わせます。
後にピストンサイズに合わせて、ボーリングとホーニングをします。
ホーニング時のピストンクリアランスは、メーカー出荷時と同じピストンクリアランス(鋳造:0.03mm)を指定します。
ホーニングピッチ(精度)を指定します。
(重要)ホーニングの良し悪しで、エンジン寿命が決まります。
メーカーと同じクリアランスにする事で、オイル消費を抑えられ、長持ちします。
この工程で、35000円から40000円程だったと思います。
(鋳造ピストンと鍛造ピストンでは、膨張率が違うため指定クリアランスが違います。)どこの内燃機屋さんへ加工を頼んでも、同じだろうと思ったら、大間違いです。 信頼のおける内燃機屋さんに依頼しないと、エンジン寿命が短くなるので要注意です。
実はヴェクのノーマルスリーブは抜けないのですか。てっきり抜けるものだと思っていました。鋳込み制作というものがあるのですね。こちらも検索エンジンで調べるとよくわかりますが、抜けない・動かないようにスリーブ外側がフラットではないそうです。 こちらなどがわかりやすいです。
鋳造と鍛造でピストンクリアランスが違うのも はじめて知りました。また メーカーと同じクリアランスにするとオイル消費も抑えられ長持ちするという情報もフルチューンのノウハウですね。実はホーニングのピッチまで指定できるのですね。そして内燃機屋さんも実はピンキリなのですね。貴重な情報をありがとうございます。ここまで国内でやっても4万円ぐらいで済んだのですね。もっとするかと思っておりました。内燃機屋さんにもよるとも思います。
Q.腰上組付けで特にに注意したこと苦労したことはありましたか?
A.組み付ける時に、高耐熱の液体ガスケットを使い、締め付けトルクをメーカー指定値より少し高めにして、組みます。
苦労したこと
A.シリンダーヘッドとピストンの干渉とバルブとピストンと干渉していないかを確認する、仮組作業が面倒ですね。
仮組をしてバルブとピストンが干渉していない事を確認します。
(ベースガスケットとスペーサーの厚みを確認、圧縮調整をします。)
フルチューンでは液体ガスケットも追加するのですね。
エンジン整備に慣れているにゃも氏でもバルブとピストンの干渉を調べる仮組は面倒なようです。
Q.ボア67mmでの慣らし・インプレをお願いします。
A.エンジンの慣らしは、カム回りが500㎞、シリンダー回りが1000㎞をハーフスロットルで走行します。
燃料満タンを5回くらいで、少しずつ高回転の当たりを付けていきます。
走行距離が増えると、当たりが付いてくるので、振動も無くなり、軽く回るようになります。
1500㎞で慣らし終了、オイル交換をします。
慣らし終了後は、オイルフィルターの交換とオイルストレーナーの掃除をします。
エンジンオイルは、人間で言う血液になります。
慣らしエンジンオイルは、モチュール300V 15w-50を使い、オイル添加剤は、ミリテック1を使用しています。
ミリテック1は、慣らし促進作用があり、摺動抵抗を減らすので、エンジンが軽く回り、振動が軽減します。
また、抱き付き、焼き付き予防にもすごく良いです。(ミリテック1は、アメリカ軍指定の添加剤です)
慣らし後は、モチュール300V 4Tオフロード 15w-60 とミリテック1を入れています。
油膜を強くして、保護しないと長持ちしないので、気を付けています。
夏場の熱対策用にオイルクーラーを取り付けて、オイル容量も1000㎖入れています。
A.インプレです
エンジンを回さないでも走るようになりました。
圧縮が上がり、排気量とトルクが増えて余裕ができました。
ハイギア(18x44)を入れてます。
加速重視のエンジン仕様ですが、街乗り走行は、低速でも中速でもノーマルと変わらず乗りやすく、
安定した走りができます。
上り坂で加速をするとハイギアの加減か、クラッチセンタースプリングがパワー負けします。
クラッチセンタースプリングの設定が難しいです。
余談ですが、ハイギア(17x45、 18x44)は、ノーマル排気量の車両にも使用可能です。
変更すると加速が良くなりますが、最高速は、試してないので、わかりません。
ウエイトローラー、クラッチセンタースプリングのセッティングが必要になります。
まず 慣らしの距離が意外に短いですね。これはやっぱりフルチューンでクランク振れ取りをはじめ 組み方も普通の人とは違うからだと思います。普通のボアアップでは3000キロぐらい大人しく慣らしている方が多いと思います。またストレナーまで掃除されるのがすごいですね。エンジンオイルもすごそうですね。ちょっと調べてみましたら、リッター3000円超えていました。慣らしは15W-50Wでそのあとは15W-60W(リッター4000円越え)にするものすごいですね。60Wですから、高温での油膜保持を気にされているのがよくわかります。ミリテック1ですか。ずっと前にモーターアップとスーパーゾイルぐらいしか試したことないです。私の乗り方だと効果もいまひとつで どっちもコスパ悪いのでずっと使っていません。ミリテック1だと500mlで5000円ぐらいでしょうか。ヴェクだと10回分ぐらい使えそうです。意外に安いですね。今度機会があったら試してみます。
インプレに関してはにゃも氏は 『余裕ができました』と さらっと書いておりますが、やっぱりこれはもとフルチューンXR600R乗りというがあると思います。普通のヴェク乗りでしたら、 『怖くてアクセル開けれません。』『急激なパワーアップで もてあましてしまいます』『やりすぎて ヴェクスターでなくなりました。』などになると思います。
ハイギヤに関しても さらっと 18/44 17/45 と2つハイギヤのことに言われています。こんなものどこにもないのですが・・・。この件にかんしては 長くなりそうなので、別にお聞きしたいと思います。
まとめますと、ヴェクスターのボア67mm化はお金だけでなく、手間・スキル・時間が必要です。そして何よりも覚悟・気合いなど必要だと思いました。にゃも氏のケースで ボア67mm化だけに関しては
ピストン16000円 スリーブ関係(8000+40000円)で 6.4万円ぐらいしか費用がかかっていないです。ピストン加工やスリーブ調達も内燃機屋さんに頼むとさらに3-4万円の費用がかかりそうです。またクランクケースボーリングも実は必要ですしね。これも2万円ぐらいかかりそうです。金属加工スキルなどあるのでかなり抑えられているのです。このことをお聞きして、現在 ヴェクのボア67mm化するには最低10万円ぐらいみておかないとだめだと思いました。
そういえば、 ヴェクのクランクケースボーリングについてお聞きするのを忘れていました。 次回は ケースボーリングについてです。
3.ヴェクスターのクランクケースボーリング クランクケース穴拡大について(2023.4.12記載)
ボアアップしすぎると シンンダースカートが太くなり、クランクケースの取り付け穴に入らなくなります。そのために 取り付け穴を拡大する必要があります。ハイチューンでは定番でして、ご存じの方も多いでしょう。 ヴェクスターだと、ボア62mmを超えると ほぼ拡大が必要になります。詳しくは こちらなど。
にゃも氏のケースではいきなりボア67mmです。今回はどのように拡大したかお聞きします。
Q.ケースボーリングはどうされましたか?おそらく内燃機屋さんに依頼されたと思うのですが、どれくらいかかりましたか?
A. 67mmのケースボーリングですが、内燃機屋さんへ確認してもらったんですが、ケース形状の問題で機械に固定できないと返事がありました。
そのため、治具を製作、自分で加工しました。
治具と言っても鉄板にベースを描いてから穴あけするだけの簡素な物です。ホールソーを使いボーリングする手法です。
ずれないようにするために、ドリルを使うのが難しかったです。
開口径が75mmなので、巻き込まれる恐れがあるために要注意しながらの加工でした。
とのことです。実はヴェクスターは クランクケースボーリングができないようです。断られたとは予想外でした。てっきりできるものと思っていましたので。
しかし さすがにゃも氏です。ご自分で加工したとのことです。
ケース穴を直径66mmから75mmに拡大なんて半径で4.5mmも拡大になります。リューターや切削ビットなどで削れる量でないと思います。
しかもなんとホールソーなんかでカットできたのですね。
てっきりホールソーは木材用で金属は無理だと思っていました。位置決めのポンチ打てないですし、穴あけの際におもいっきりずれそうで できる気がしないです。はたしてどうやったのでしょうか。
わかりやすい お写真をたくさんいただきました。
左側がボア67mm用のスリーブです。加工前で、ボーリング・ホーニング・ヌケ止め加工などは内燃機屋さんに依頼します。
こちらが自作された治具と ホールソーです。まず左側の鉄板を加工するのですが、これだけでも結構大変そうです。
クランクケースに取り付けた写真です。スタッドボルトを4本を抜くのも少し手間ですね。
外径75mmのホールソーを当てた写真です。これをハンドドリルに取り付けて、カットしていきます。中心を固定できないので、相当難しそうです。にゃも氏も苦労したと言っていますね。
75mmのホールソーにてカットされたクランクケースです。きれいな真円ですね。右下のスタッドがギリギリなことがわかると思います。ヴェクのクランクケース穴は拡大できても最大サイズ75mmなのがよくわかります。
大径スリーブを仮入れした写真です。クランクケース側が75mmでスリーブの外径が72mmなので、クリアランス(ケースとスリーブのスキマ)は1.5mmですね。熱量が大きくなるので、かなり余裕をもたせているのかと思いましたら違うとのことです。
にゃも氏よりです。
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75mmなのは、ホールソーが手元にあったので、最大径になりました。
本当は、73mmか74mmのホールソーにすれば、ベースガスケットの面を稼げたと思います。
仕事で必要な工具なので、工具箱に入っていたんですよね。
隙間が広いと内圧により、ベースガスケットの吹き抜けを誘発するため、ギリギリまで詰めるのが理想ですね。
最悪は、ジュラルミンのパイプで薄いスリーブを作り、アルミ補修材:デブコンで張り付ける事を考えていました。
組み付ける時に、液体ガスケットを塗るので圧抜けは、ありません。
熱量の件ですが、シリンダー本体は、そこまで膨張しませんので、勘違い無きようにお願いします。
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なるほど、実はシリンダー本体はそんなに膨張しないのです、ギリギリがいいのですね。ベースガスケットの接触面積も狭くなるので、吹き抜けも考慮しないといけなかったですね。もし75mmで吹き抜けてしまった場合の想定・準備もすごいですね。デブコン(DEVCON)というもの初めて聞きました。こちらも軽く調べたら 金属補修材です。エンジン整備にもいろいろ使えそうですね。
さらに位置決めの鉄板についてさらに情報をいただいきました。
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ケース加工に使った治具用鉄板の厚みは15mmですが、理想は、
ホールソーと同じ長さの50mm位の厚い物のほうが、
内径と垂直を狂わせないので良いのですが、加工に手間と時間が掛
かるのと、重たいので手頃な15mmにしました。
鉄板も購入すると意外と価格が高いです。
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てっきり厚さ3mmぐらいだと思っていました。理想は50mmですか・・・。私は15mmな時点で尻込みします。金属加工は厚くなるほど大変で、工具も変わります。10mm超えてくるとハンド工具では穴などがまっすぐきれいに開けれらないです。ボール盤みたいなのが必要です。
以上がヴェクのクランクケース最大拡大の流れです。金属加工になれていないとまず無理だと思いました。ホールソーが金属にも使えて、外側で位置合わせもできるのが驚きでした。
さらに ボアアップ時の情報をいくつか頂きました。せっかくなので、そのまま載せます。
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慣らし走行が短く済むのは、ホーニング精度の差があると思います。
見た目で、シリンダーにピッチ目が見てわかるようなら、荒い仕上げになっています。荒いサンドペーパーをかけているのと同じ考えです。
慣らしが終わる頃には、シリンダー、ピストンも滑らかになりますが、
ピストン表面も荒れているので、慣らしが終わる頃には、ピストン、ピストンリングも削れています。低走行距離でも、白煙を吹くようになります。そのため、オイル消費も早くなります。
慣らしの手順も、様子を見ながら徐々に負荷を掛けながら、少しづつ回していく感じです。
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慣らしをちゃんとやらないと エンジン寿命などが違うのがよくわかりますね。おそらく中華パーツやノーマルだとホーニングはほとんどが荒目なのだと思いました。粗目のほうがオイルの食いつきがよく、慣らしをしない人にも対応できます。慣らしをできるかたはホーニングを細目にするといいですね。
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あと、暖気運転の件ですが、最低5分はしないとオイル潤滑が追い付かないので、部品の消耗が早くなります。
ピストンの裏側が焼けて黒くなります。また、ピストンピンが抜けなくなり、ピストン側面に縦傷が入ったりします。
カムチェーンの伸びも早いです。
暖気運転は、オイル潤滑と熱膨張の時間です。準備運動ですね。
オートチョーク付きのキャブは、燃料が濃い状態から走行できるので、気にしないで走り出しているとおもいますが、
自分の場合は、暖気運転をしないとギクシャクして走行できないんですよね。
オイル温度もなかなか上がらない冬場は、気を使います。
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なるほど、暖気運転の重要性がよくわかりますね。ボアアップするとさらに重要になりますね。たまにピストンピンがなかなか抜けないバイクがあったのは暖気もされずに荒く乗られていたのですね。私は今までヴェクの暖気は走行しながらやっていました。なるべく停車しながらやろうと思いました。
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キャブセッティングですが、ノーマルの基本が決まっているので、10番から15番アップで済みます。圧縮が高いと、濃くなります。
薄いより濃いめのセッティングからが基本ですが、薄いとトルク感が無く、回ります。濃すぎると回らないので、少し薄くするようにセッティングすれば、良いです。排気量が大きくても、圧縮が低いとメインジェットは、大きくなりません。圧縮比で変わります。
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キャブセッティングもとても分かりやすいですね。圧縮比・圧縮でMJが決まるのですね。てっきり排気量で決まるものだと思っておりました。過走行だと圧縮落ちていくので、場合によってはMJをさげた方が調子よくなりますね。なるほど、さすがフルチューナーですね。キャブに関してはまた別にお聞きしたいと思います。
・・・・つづく
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